たかが借用書されど借用書

借用書の書き方の盲点


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借用書の書き方は立場で違う




  借主の立場 「簡単な内容で済ませたい」

  貸主の立場 「隙のない契約書にしたい」


借用書の書き方アドバイザー画像 個々の事案を無視して、安易に巷のテンプレート(ひな形)等をそのまま使うことは危険です。

 巷のひな形等は、 個々の状況や立場については配慮されていません。貸主と借主では、その立場や利害関係は正反対です。


借用書の書き方アドバイザー画像 金額が大きいにも関わらず、借主側が一方的に差し出してきた書面を、そのまま受け取るだけで済ませていませんか?

 借主側が一方的に差し出してくる書面は、借主に都合の悪いことは排除した内容になっていることが多いです。

借用書を作ること自体が

重要なのではありません。

状況に合った適切な書面を作ること

こそが重要なのです!


【誤解だらけの借用書の書き方】


1、法的根拠を誤っている書面が多い


 個々の事情を聞いてみると、法的には貸したお金とはいえない のに、「借用書」と称してあたかも「金銭消費貸借契約上の貸付金」であるかのような誤った書面を作ってしまっている方が多いです。

 実際の具体的事実関係を無視して、契約書を作ってしまうと失敗します。

 例えば、交際相手が、あなたのクレジットカード等を無断で勝手に使ってキャッシングをしてお金を得ていた場合に、そのお金を返還しろという主張は、お金を貸したわけではないので金銭消費貸借契約に基づく主張とは異なります。そのような主張は、不法行為による損害賠償(民法709条〜)または不当利得返還請求(民法704条〜)になるでしょう。

 また、代金の立替費用の負担 は、金銭消費貸借契約による金銭の授受ではありません。立替代金を債務者に請求することは、準委任契約に基づく費用償還請求(民法650条)の性質を有すると考えられます。

 連帯保証人が借金の肩代り をした後に、肩代りした金銭の返還を主債務者に請求することは、求償権の行使(民法459条〜)と言い、これも金銭消費貸借とは異なります。

 その他、保管委託をしていたお金の返還請求、物を売った代金の請求、サービスを提供した料金の請求、各種契約を解除したことによる返金等々すべて金銭消費貸借契約に基づく貸付金とは異なります。また、複数の性質の金銭債務が混在している場合もあります。

 さらに、投資案件など詐欺等の犯罪に巻き込まれた可能性のあるお金については、安易に借用書等を作って解決しようとすると、民事不介入ということで警察も動いてくれなくなる可能性がありますので、刑事事件も視野に入れて、弁護士や警察等に相談なさることをお勧め致します。


借用書の書き方アドバイザー画像 当事務所では、依頼者様から事情をうかがい、実態に合わせた契約書の作成をすることを心がけております。

2、金銭授受の日付


 銀行振込で金銭を授受した場合は、日付は振込用紙や通帳に記録されているので、金銭を授受した日付は正確に判ります。

 しかし、手渡しで金銭を授受した場合などは、記憶が曖昧な場合が多く、きちんと記録しておかないと、金銭を授受した日付が不明である ことが多いです。

point 日付が不明であるからといって、無理して不正確な日付を借用書等に記載することは禁物です(もちろん、判明している場合は正確に記載すべきです)。

 適当に誤った日付を記載してしまうと、例えば、「その日は海外にいたので、手渡しで受け取っているはずがない」等 矛盾を指摘され、せっかくの書面としての証拠価値が損なわれる可能性があります。

 ただし、正確な日付が判らないからと言って、金銭の授受がいつ行われたのかを全く記載していない書面は問題があります。

 正確な日付が判らない場合でも、でき得る限り 「時期」を特定 した書き方をすることで対処するべきでしょう。

 また、金銭を複数回に分けて授受している場合にも、各日付が正確に判る場合には正確に記載する必要がありますが、判らない場合はやはり、それぞれの「時期」をできるだけ特定 した書き方をした方が良いです。

借用書の書き方アドバイザー画像 ちなみに、契約書を作成した日付 つまり 「作成日付」については、必ず記入する必要があります。

3、一部弁済の事実


point 貸したお金の一部を返してもらったことがあり、現在に至っている場合には、「一部弁済の事実」の経緯を借用書(債務承認弁済契約書)の「債務の承認」の条項の中で的確に記載しておく必要があります。

 「一部弁済の事実」は、借主による「債務の承認」に当たる事実に該当します。

 そして、「一部弁済の事実」の有無やその金額というのは、裁判等で争点とされることも多い事実です。

 「借りたことは認めるが、一部弁済により残金は、もっと少なくなっているはずだ」 「一部弁済を受けたことはあるが、返済された金額は○万円だけだ」等々、一部弁済の事実については当事者間の主張が噛み合わないことがよくあります。

 ですから、後々の紛争を防ぐためにも、一部弁済の事実は、的確に記載しておくことが肝要です。


借用書の書き方アドバイザー画像 書面作成のプロの視点からすると、あらかじめ争点となりそうな部分は、争点とならないよう事前に、書面上もきちんと潰しておくという事が重要です。

 当事務所では、「一部弁済の事実」についても、依頼者様から経緯をお聞きした上で、的確に記載いたします。

4、債務承認弁済契約書 〜二つの考え方〜

 当ページでは、「債務承認弁済契約書」といった契約書も含めて、便宜上「借用書」と総称させていただいております。

 債務承認弁済契約書とは、金銭債務が現在すでに存在していることを認め、その金銭債務をどのように弁済して行くのかを合意する契約書のことを言います。


point 債務承認弁済契約書を作る際、大きく分けて次の二つの考え方があります。

(1)ひとつは、あらためて 支払期限を新たに設定 し、新たな契約書を作って仕切り直す という考え方です。

(2)もうひとつは、従前の契約内容を維持 した上で、支払計画だけを練り直すという考え方です。


(1)の考え方は、当事者間で、従前の契約内容があやふやであった場合などに、新たに内容の充実した契約書を作って、仕切り直しをするという場合を想定した考え方です。

(2)の考え方は、当事者間で、従前の契約内容が明確である場合に、従前の契約内容を基本としつつ、支払計画だけを見直すという場合を想定した考え方です。


借用書の書き方アドバイザー画像 知人間で、契約内容を曖昧にしたまま、現在に至ってしまっている場合等には、(1)の考え方に立ち、仕切り直しのために債務承認弁済契約書を新たに作成する場合が多いかと思います。

5、利息を取る場合の「利率」について


 友達や親戚などの親しい間柄でお金を貸す場合は、利息はあえて取らない(無利息)とする方が多いようです。

 本来、金銭消費貸借契約というのは、原則 無利息の契約類型です(双方商人の場合は例外)。

 ですから、個人間での金銭消費貸借の場合、もし利息を取るのであれば、「利息を取る旨の約定」をする必要があります。

 約定がなくても、法定利率の利息が取れると思い込んでいる人も多いですが、それは間違いです。後述する遅延損害金と混同しているのだと思います。

 いずれにせよ、利息を取る場合は、「利率」を明確にし、元金に対してどれだけの利息を取るのかを誤解のないように的確に記載する必要があります。

 ただし、利率は利息制限法の上限を守ってください。利息制限法1条の上限を超える部分は無効になります。


借用書の書き方アドバイザー画像 ちなみに、利息を「利率」ではなく、「固定額」で記載してある借用書を目にすることがあります。

 例えば、「利息は、まとめて10万円とする」というような書き方をしているものです。

 素人判断で、このように固定額で利息を決めてしまうと、年率に換算し直すと利息制限法を超える利息を取ってしまう危険性が出てきます。

 特に、分割払で「期限の利益喪失約款」を付す場合は要注意です。

 期限の利益喪失約款が付いている契約では、早い時点で期限の利益喪失事由が発生してしまうと、その時点で元金に固定額で示した利息を含めた全額について支払い期限が到来しますので、固定額の利息額は利息制限法に違反する可能性が高くなります。

 上の例で言うと、例えば1か月目でいきなり、期限の利益を喪失した場合には、たったの1ヵ月で10万円の利息が発生したことになるからです。

6、分割払いの場合の利息の支払方法


point 「分割払い」で、かつ 「利息も取る」という場合は、元金と利息の支払方法まで、明確に決めておかないといけません。

 いつ・どうやって利息を支払うのかが不明確な書面を作成してしまうと、両者の間で認識の齟齬が生じ、後々トラブルを招きます。

 巷に出回っている借用書の雛形(テンプレート)の類は、利息の支払方法が不明確・不正確な記載のものが多いです。


「分割払い」の場合の、元金と利息の支払方法 は、大きく分けて

@ 「元金均等払い(利息毎月払い)」 A 「元金均等払い(利息後払い)」 B 元利均等払い」 があります。

 元金と利息の支払方法については、どの支払方法を採用するかにより、毎月の支払額や分割回数、最終的な利息合計額などに大きな違いが出てきます。

 また、どの支払方法を採用するかにより、借用書の書き方も全然違ってきます。

借用書の書き方アドバイザー画像 後々トラブルにならないように、利息を取る場合は、元金と利息の支払方法について明確に判るような書き方にしておかなければいけません。

 どの支払方法を採用するかは、下記の各支払方法の特徴(メリット・デメリット)を考慮して、決めると良いでしょう。





毎月の利息額=残元金×年利÷365日×当期の日数


 @「元金均等払い(利息毎月払い)」とは、毎月均等に一定額を元金(元本)に充当していきます。その上で毎月の利息額を計算し、元金充当分にその月の利息分を加えた額を毎月支払っていく方法です。


 A「元金均等払い(利息後払い)」とは、毎月均等に一定額を元金に充当していきます。その上で、毎月の利息額については、まとめて後で支払うという支払方法です。

 例えば、利息を半年に一回ないしは一年に一回の頻度で、まとめて支払うというものです。


 B元利均等払い」とは、あらかじめ毎月の支払設定額を一定額に定めた上で、支払設定額の一部を先ず利息に充当し、残りを元金に充当していくという支払方法です。

 例えば、毎月の支払設定額を3万円に設定した場合、当月の利息額が1,525円だったとすると、先ず1,525円を利息に充当し、残りの28,475円を元金に充当し、合計で設定額の3万円を支払うというものです。

 翌月も同じように、先月元金に充当した28,475円を残元金から控除した上で、当月分の利息を計算し、合計で3万円になるように支払ってもらいます。

 このように、当月の利息と元金を合わせて毎月の支払設定額である3万円になるように計算し、残元金が無くなるまで支払を継続していくのが元利均等払い」です。なお、端数については最終月で調整します。




【メリット・デメリット】


 毎月の支払額を、一定額にしたいという方は、、Aの「元金均等払い(利息後払い)」かBの元利均等払い」を選択することになるでしょう。
一般的には、Bの元利均等払い」を選択する方が多いと思います。


 ただし、Bの元利均等払い」の場合は元金支払に充当される分が毎月違ってくるので、毎月の元金充当分と利息額の内訳がわかるようにしておく必要があります。

 また、Bの元利均等払い」を採用した場合、支払計画表を事前に作成しておかないと一見しただけでは、合計で何回の分割払いになるのかが解りずらいです。


 これに対して、@の「元金均等払い(利息毎月払い)」の場合は、一定額の元金支払の他に、毎月の利息額を加えるので、毎月の支払額は一定にはなりません。

 しかし、元金については毎月一定額で減っていくので、残元金がいくらなのかは一目瞭然であり、合計支払回数も簡単に計算できます。

 毎月支払う利息がいくらかは、面倒でも毎月 その月の分の利息を計算して伝えておくと良いでしょう。

 その月の利息額をメールでお知らせるという名目で、毎月の支払催促 が自然にできるというメリットもあります。

 例えば「今月の利息額は○○円となります。元金と合わせて金○万○○円を期日に振込んでください」等と、毎月の支払催促のメー ルをする口実ができます。


 @とBの折衷案として位置ずけられるのがAの「元金均等払い(利息後払い)」です。

 この方法は、毎月均等額を元金に充当していくので、残元金の計算は明瞭です。

 そして利息は後でまとめて支払うとすることで、利息支払月以外の月の支払額は元金充当分だけで済みますので、利息支払月以外の月は支払額を一定にすることもできます。

 ただし、毎月発生している利息額についてきちんと控えておかないと、後でまとめて支払ってもらう利息の合計額が解らなくなりますので、その点についてはしっかりとした管理が必要になります。

 ですから後払いであっても、毎月の利息額をきちんと算出して、「今月の利息は○○○円です。今までの利息と合わせた累積額は○○○○円です」等と、相手にメールを定期的に入れ、お互いに認識の齟齬がないように管理していくことが賢明です。

 また利息をまとめて支払う時期を遅くに設定し過ぎると、累積利息の額が高額になってしまいますので注意してください。

 累積利息があまり高額にならないように、例えば半年に一度ないしは一年に一度という頻度で元金とともに累積利息を支払ってもらうようにした方が良いと思います。



借用書の書き方アドバイザー画像 どの支払方法を選ぶにしろ利息計算ソフトやエクセル等で、予め支払計画の概算(シミュレーション)を出しておくことをお勧めします。

7、遅延損害金について


 前述したように、知人間では温情で、利息を取らない場合もあります。

 ただし、利息を取らない場合であっても、相手が支払を怠った場合の 遅延損害金(遅延賠償)の規定についてはきちんと記載しておいた方が良いです。

 法律上は、遅延損害金の約定がなくても法定利率の遅延損害金をとることはできます(民法419条)が、お互いに誤解のないように、遅延損害金については、借用書に明確に記載しておくことが賢明です。


遅延損害額=遅延額×遅延損害率÷365日×遅延日数




【利息と遅延損害金(遅延賠償)の関係】


 期限が過ぎた場合には、利息ではなく、遅延損害金(遅延賠償)の問題に移行します。利息と遅延損害金は法的には別ものです。

 利息は、あくまで期限までの元本の利用料みたいなもので、これに対し遅延損害金は、期限が過ぎた債務の損害の填補のような感じでとらえてください。

 ですから、期限後は、期限到来分については、利息ではなく遅延損害金で処理することになります。

point もっとも、後述する 期限の利益喪失約款とリンクさせて規定することで、期限の利益を喪失した後は、残元金全額について期限が到来したと扱われますので、残元金全額について遅延損害金で処理することが可能になります。


借用書の書き方アドバイザー画像 ちなみに、利息についての利率よりも、遅延損害金の利率の方が低く規定されている借用書を見かけることがありますが、これはおかしな借用書です。

 なぜなら、支払を遅延した方が、かえって低い率の賠償で済むというのは、不合理だからです。

8、期限の利益喪失約款について


 「期限の利益」とは、債務者は、期限が到来するまでは、債務の履行を請求されないという利益のことを言います。

 そして、「期限の利益喪失約款」とは、債務者が債権者の信用を失わせるような一定の行為や状態を発生させた場合に「期限の利益」を失わせるという条項のことを言います。

 特に分割払いの場合には、期限の利益喪失約款を付けておかないと、月々の支払を怠った場合は、その月の支払分しか請求できないので注意が必要です。

 つまり、毎月の支払を怠った場合に、ペナルティとして残元金全額の支払い期限を到来させるためには、その旨の期限の利益喪失約款を付けておく必要があるのです。

 一括払いの場合であっても(分割払いの場合も同様)、貸主が破産申し立てをしたり、他の債務で差押等をかけられた場合等には、期限の利益を失わせて、その時点で全額支払を請求するようにしておいた方が良いです。。

借用書の書き方アドバイザー画像 このように、期限の利益喪失約款は、特に分割払いの場合は重要な規定になります。





point なお、時々、借主の立場を考慮してか、期限の利益を喪失させる条件として借主に対する「事前通知」を、要求している借用書を目にすることがあります。

 このような条件を付けてしまうと、将来 法的手段を取るときに、借主への「事前通知」がきちんとなされたという事実を貸主が証明しないといけなくなってしまいます。

 借用書の書き方の少しの違いで、法的効果にも影響が出てしまいます。


point また、手形の不渡りなどを期限の利益喪失事由に挙げている借用書を目にすることもありますが、手形取引とは無縁の一般人に対して、手形の不渡りなどの事由を喪失事由に挙げても、さほど意味があるとは思えません。

 実際問題、自己破産や手形の不渡りなどの事態に陥るときには、貴方に対する毎月の支払も滞っているはずです。
 「1回でも支払いを怠ったとき」という期限の利益喪失事由を入れておけば、その時点で期限の利益は喪失しますので、実は手形の不渡りや、自己破産の申立てをした等の期限の利益喪失事由はあまり使うことはないかと思います。


借用書の書き方アドバイザー画像 期限の利益喪失約款については、あまり使わない事由は記載されているのに、肝心な事由が欠落しないように注意が必要です。

9、管轄の合意をする場合


 第一審の裁判所は、管轄の合意がない場合、原則として被告の住所地の管轄裁判所または義務履行地の管轄裁判所が第一審裁判所になります(民事訴訟法4条1項、5条1項)。

 金銭債務の場合、持参債務の原則(民法484条)があるので、債権者(貸主)の現住所地を義務履行地とすることが可能です。

 また、争いもありますが、振込先銀行が指定されている場合には、その銀行の所在地を義務履行地と解することもできます。

 その意味で、仮に管轄の合意がなかったとしても、債権者(貸主)の住所地を管轄する裁判所に第一審の訴えの提起をすることは可能です。

point もっとも、あらかじめ管轄の合意をして、第一審の裁判所を債権者(貸主)の住所地を管轄する裁判所とする条項を借用書に盛り込んでおけば、義務履行地がどこかなど気にしなくても良いので、より安心でしょう。

 留意すべきは、管轄の合意が許されるのは第一審の裁判所に限られるということです。

 また、簡易裁判所を通じた「仮執行宣言付支払督促」の制度を利用する場合には管轄の合意は認められず、債務者(借主)の住所地を管轄する簡易裁判所に申し立てをしなくてはいけないという点にも留意しておいてください。

借用書の書き方アドバイザー画像 ちなみに、民事調停についても、管轄の合意が許されております(民事調停法3条1項)。

10、連帯保証人を付ける場合の書き方


 「ひとつの契約書」の中で、連帯保証契約 も結ぶことができます。その場合、契約書には債権者(貸主)・債務者(借主)・連帯保証人となる者の三者の署名・押印が必要となります。

借用書の書き方アドバイザー画像 なお、連帯保証契約は、債権者(貸主)と連帯保証人との間の契約です。ですから、連帯保証契約の合意の当事者は債権者(貸主)と連帯保証人ということになります。債権者(貸主)と債務者(借主)の間だけで勝手に連帯保証契約を締結することはできませんのでご注意ください。

11、清算条項について


 清算条項とは、簡単に言えば、本契約書記載の債権・債務以外には、一切の債権・債務関係が存在しないことを確認する条項です。

point 「貸主の立場」からすれば、清算条項はあえて記載しない方が良いでしょう。

 貸主の立場からすると、先々、諸々の新たな債権が発生する可能性もありますので、このような清算条項を入れるとそれを盾に、「契約書記載以外の債務は一切存在しないと書いてあるじゃないか」等と債務者から不合理な主張をされる可能性もあるからです。

借用書の書き方アドバイザー画像 一般の雛形(テンプレート)等の中には、「借主の立場」から、このような清算条項が入っているものもあるので、「貸主の立場」からは安易に清算条項を入れないように注意が必要です。

12、借用書原本を何通作成するか


 慎重を期す場合には、紛失等に備えて原本を2通作成して、貸主・借主それぞれが各1通を保持します(借用書の中で連帯保証契約をしている場合には保証人の分も必要)。

 また、原本をお互いが所持することで、契約をしたことに対する心理的プレッシャーも高まるといえます(なお、元本を複数作る場合は相互の関連性を証するため「割印」を押してください)。


 しかし、借用書等の「原本」にはその額に応じて収入印紙を貼付しなければなりません。貸付け額が大きくなると、印紙代も高くなります。

point そこで、印紙代を節約するために原本を1通にして、原本を貸主が保持し、借主にはコピーを渡すという方法もあります。収入印紙は原本にだけ貼れば良いので、原本を1通にすれば印紙代が節約できます。

 借用書等の原本をコピーする場合は必ず白黒コピーにしてください。カラーコピーをしてしまうと印紙等模造取締法や印章偽造罪に抵触する可能性があるからです。

 いずれにしろ、原本を何通作成し、誰が原本を保持するかは、書面の結語で明確に記載すべき事項ですので必ず決める必要があります。

借用書の書き方アドバイザー画像 なお、収入印紙の貼付と借用書を含めた契約書の効力とは無関係です。印紙貼付はあくまで税法上の要求にすぎないからです。

13、署名・押印


 借用書等への署名は必ず、当事者本人が直筆で行ってください。ワープロ打ちでは署名とは言えません。

 直筆で署名することにより、筆跡鑑定が可能となり、後で、自分はこのような書類に署名した覚えはないと言えなくなります。

 また、当事者が個人ではなく法人の場合は、会社名の他に代表取締役の氏名も記載してください(「○▽株式会社 代表取締役 氏名」)。

 署名欄の上に、住所欄も設けて記載してください。法人の場合は、会社の本店所在地の住所を記載してください。

 押印する印鑑は認印でも実印でも契約書の効力自体には影響はありません。ただし、実印を使用した場合の方が、本人が署名・押印したという推定がより強く働きます。

 実印を使う場合には、印鑑証明書を添付してもらい住所の記載は印鑑証明書に記載されている住所と一致するようにして下さい。

 一致しない場合には、役所への移転届を先に済ませてから印鑑証明書の交付を受け署名・押印した方が良いでしょう。

 また、当事者が法人の場合は、会社の代表者の代表印を押し印鑑証明書も添付してもらう必要があります。

14、当事者が未成年の場合の書き方


 未成年者が当事者となって契約をする場合には、原則として法定代理人(親権者又は後見人)の同意が必要です(民法4条1項)。

 法定代理人の同意を得ていない契約は取消すことが可能となります(民法4条2項)。

 ですから、未成年者が当事者となる借用書の署名・押印欄には必ず法定代理人の署名・押印欄も設けて署名・押印をしてもらってください。

 両親が健在で離婚していない場合には、通常両親が親権者であり法定代理人になります。そして、共同親権の原則により、親権者である父と母の両方の署名・押印が必要となります。

 両親が離婚していたり一方が亡くなっている場合には、親権者となっている父または母の署名・押印をもらうことになります。

借用書の書き方アドバイザー画像 いずれにしろ、相手が未成年者の場合は、金銭の貸し借りはしない方が良いと思います。

15、借用書だけでは強制執行力はない


 ペナルティと称して、「支払いを怠った場合には強制執行(差押)を認諾する」というような強制執行認諾文言を勝手に記載している借用書を見かけることがあります。

 しかし、私人間で作成した借用書の中で勝手にそのような記載をしてみたところで、強制執行力が付与される訳ではありません。

 執行裁判所に強制執行を申し立てるためには、債務名義 という公のお墨付きのある文書が必要となります。

 具体的には、・裁判の確定判決 ・裁判所の和解調書 ・仮執行宣言付支払督促 ・執行認諾約款付の公正証書 等が代表的な債務名義です。

借用書の書き方アドバイザー画像 「金額が大きく」 かつ 「借主の協力」が得られるのであれば、あらかじめ債務名義を得ておくという意味で、 執行認諾約款付の公正証書 にすることを、お勧めいたします。

16、転ばぬ先の杖


借用書の書き方アドバイザー画像 ネット上でお伝えできる情報には限りがあります。

 本ページでは、よくある誤解に基づいた借用書等の書き方を中心に紹介してきましたが、その他 状況に応じて記載した方が良い条項や逆に記載すべきではない条項など、様々です。

 相手の状況次第で、話し合いの現場で月々の返済額を決めたいという場合には、分割回数や月々の返済額などの箇所を空欄にしておいて現場で交渉してから手書きで数字を記入するような形態の契約書を用意するなど、臨機応変な対応を致しております。


point 書面を作成しておくことは、将来、貸金を回収するための最低限の準備です。

 信頼できる専門家に依頼して、適切な書面を作成しておくことが肝要です。
借用書の書き方アドバイザー画像 借用書の書き方は多種多様です

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2024 . 1. 19 更新

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